学習障害のタイプと特徴とは?文字の読み書き、計算などが苦手な子のサポート
学習障害とは、発達や知的な遅れがないのに、「聞く」「読む」「話す」「書く」「計算する」「推論する」能力のうち一つ以上に困難を示す状態のことを言います。
学習障害のタイプや特徴、サポート方法について言語聴覚士が詳しく解説します。
学習障害(LD)とは
皆さんは、学習障害(LD:Learning Disability)についてご存知でしょうか。
学習障害には、様々なタイプがあり、一人ひとり症状は異なります。
学習障害の症状の程度も人それぞれですが、小学校1年生〜4年生ぐらいの間に気づかれる場合が多いです。
学習障害があると、学校での勉強や学習に困難が生じるだけではなく、日常生活や友達関係でつまづく原因になる場合があります。
まずは、学習障害のある子どもの症状の例を紹介します。
症状の例:こんな様子はありませんか?
- ひらがな・カタカナ・漢字を覚えられない
- 文字を正しく書けない、書くのに時間がかかる
- 枠の中に文字を書けない、鏡文字や書き間違いが多い
- 読み間違いが多い、音読に時間がかかる
- 足し算・引き算を指を使わないとできない、計算に時間がかかる
- やる気はあるのに、とても苦手な教科がある
- 特定の教科だけ、勉強や宿題を嫌がる
このような様子がある場合、学習障害が原因である可能性があります。
学習障害の特徴
学習障害とは、学習に必要な次の6つの能力のうち1つ以上について、とても苦手である状態です。
- 聞く
- 読む
- 話す
- 書く
- 計算する
- 推論する
知的障害や発達の遅れがないのに、これらの能力をうまく使えないことを学習障害と言います。
学校での勉強に影響するだけではなく、日常生活での困りごとが増える場合があります。
例えば、次のような症状も学習障害が原因かもしれません。
- 話の内容がわからず人とのやりとりが苦手
- 順序立てて文章で説明できない
- 時計やカレンダーの意味が理解できずに計画を立てにくい など
医学的な名称について
「学習障害」には、教育界と医学界それぞれの定義があります。
先ほど紹介した学習障害の特徴は、文部科学省による教育界の概念です。
- 文部科学省の定義:「聞く・読む・話す・書く・計算する・推論する」能力の困難さ
- 医学的な定義:「読字・書字表出・算数」の障害
次に、医学的な学習障害について紹介していきます。
読字障害(ディスレクシア)
読字障害(ディスレクシア)とは、文字を読む時に困難さの生じる状態です。
- 文字を正確に読むことができない
- 文字をなめらかに読むことができない
上記の2つのうちいずれか、もしくは両方の症状があります。
ひらがな・カタカナでは、読み間違いが生じやすく、漢字では読めなかったり覚えられなかったりします。「忘れた」と言う子もいます。
小さい「ゃゅょ」など拗音や、伸ばす音「ー」、つまる音「っ」があるとき、うまく読めない子もいます。
教科書やプリントの文字をうまく読めなかったり、読むのに時間がかかったりする場合があります。
書字表出障害 (ディスグラフィア)
書字表出障害(ディスグラフィア)とは、文字を書くことに困難さの生じる状態です。
文字を読んで理解したり、音読することはできるのに、文字を書くことが苦手だったり、時間がかかったりします。
- ひらがな・カタカナを書くときに鏡文字になる
- ますの中に文字をかけずにはみ出す
- 漢字を書けない、思い出せない
- 漢字を書くときに余分な点などを書いてしまう
- 送り仮名を間違える
- 句読点を使えない
- 黒板の文字をノートに書き写せない
上記のような症状が出ることがあります。
学校の授業でノートをうまく書けなかったり、テストの時文字を書くのに時間がかかる場合もあります。
算数障害 (ディスカリキュア)
算数障害(ディスカリキュア)とは、計算や数学的な考え方に困難さの生じる状態です。
- 数字の概念や、大小の理解ができない
- 足し算や引き算をするときに指を使わないとできない
- 九九や暗算ができない
- 繰り上がりや繰り下がりのある計算ができない、間違える
- アナログ時計を正しく読めない
- 定規をうまく使えない
上記のような症状が出ることがあります。
計算だけではなく、推論する力や、時間の感覚などが分かりにくい場合もあります。
学習障害の原因
学習障害の原因は明らかになっていませんが、脳の情報処理や認知の仕組みの”くせ”ではないかと考えられています。
学習障害のタイプや、医学的な名称についても紹介しましたが、その区分は明確なものではなく症状も子どもによって様々です。
育て方やしつけ、家庭や学校の環境などによって発症するものではありません。
また、本人の努力不足でもありません。
学習障害が心配になったら
学習障害が心配になったら、まずは担任の先生に相談しましょう。
現在は学校が地域の窓口となり、対応を考えてくれる場合がほとんどです。
保護者の方の同意のもと、学校から医療機関や教育センターにも相談することができます。
入学前でしたら、入学予定の学校や、地域の保健センター・教育センターに相談してみましょう。
どんな検査をするの?
学習障害を診断するには、原因となる病気や障害がないかを調べることも必要です。
次のような検査が行われる場合があります。
- 聴力検査・視力検査
- 脳波検査
- 知能検査・心理検査・言語検査
- 学習障害の検査
医学的に明らかな原因がなく、知的発達の遅れもなく、学習障害の症状がある場合、学習障害であると判断されます。
学習障害と発達障害
学習障害は、知的な発達や発達障害が原因で起こるものではありませんが、発達障害と合併していることもあります。
- ADHD
- 自閉症スペクトラム
- 知的障害
- てんかん
これらの障害と間違われることもありますし、両方を併せ持っている場合もあります。
学習障害のサポート方法
学習障害は、本人の努力不足によるものではありません。
やる気はあるのに、うまくできなかったり、時間がかかってしまう状態です。
苦手な部分への配慮も必要ですが、得意なことや好きなことを伸ばすことが大切です。
「なぜできないの」「もっと勉強しなさい」というような言葉は、その子の自信をなくしてしまいます。
できないことや、苦手な部分ばかりに目を向けず、その子の長所を見つけてあげるようにしましょう。
その上で、苦手な部分への対応方法や、周囲の配慮を考えていくことが必要です。
学習障害のそれぞれの症状への対処については、今後詳しく紹介していこうと思います。
まとめ・終わりに
今回は、学習障害の特徴やタイプ、サポート方法について詳しく解説しました。
学習障害がある場合、苦手な部分への対応を考えるだけではなく、その子の長所を見つけて伸ばしてあげることが大切です。
KIZUKIは言語聴覚士による言葉と学習支援の教室です
KIZUKIでは、言語聴覚士による個別のレッスンを行なっています。
小学校の学習支援や、学習障害の症状のサポートに加え、プログラミングなど好きな活動も取り入れながら、長所や特技を伸ばしていきます。
ことばの症状だけではなく、学習についても気になることがあればお気軽にご相談ください。