学習障害のタイプと特徴とは?文字の読み書き、計算などが苦手な子のサポート

2020年6月9日

学習障害とは、発達や知的な遅れがないのに、「聞く」「読む」「話す」「書く」「計算する」「推論する」能力のうち一つ以上に困難を示す状態のことを言います。

学習障害のタイプや特徴、サポート方法について言語聴覚士が詳しく解説します。

学習障害(LD)とは

皆さんは、学習障害(LD:Learning Disability)についてご存知でしょうか。

学習障害には、様々なタイプがあり、一人ひとり症状は異なります。

学習障害の症状の程度も人それぞれですが、小学校1年生〜4年生ぐらいの間に気づかれる場合が多いです。

学習障害があると、学校での勉強や学習に困難が生じるだけではなく、日常生活や友達関係でつまづく原因になる場合があります。

まずは、学習障害のある子どもの症状の例を紹介します。

症状の例:こんな様子はありませんか?

  • ひらがな・カタカナ・漢字を覚えられない
  • 文字を正しく書けない、書くのに時間がかかる
  • 枠の中に文字を書けない、鏡文字や書き間違いが多い
  • 読み間違いが多い、音読に時間がかかる
  • 足し算・引き算を指を使わないとできない、計算に時間がかかる
  • やる気はあるのに、とても苦手な教科がある
  • 特定の教科だけ、勉強や宿題を嫌がる

このような様子がある場合、学習障害が原因である可能性があります。

学習障害の特徴

学習障害とは、学習に必要な次の6つの能力のうち1つ以上について、とても苦手である状態です。

  • 聞く
  • 読む
  • 話す
  • 書く
  • 計算する
  • 推論する

知的障害や発達の遅れがないのに、これらの能力をうまく使えないことを学習障害と言います。

学校での勉強に影響するだけではなく、日常生活での困りごとが増える場合があります。

例えば、次のような症状も学習障害が原因かもしれません。

  • 話の内容がわからず人とのやりとりが苦手
  • 順序立てて文章で説明できない
  • 時計やカレンダーの意味が理解できずに計画を立てにくい など

医学的な名称について

「学習障害」には、教育界と医学界それぞれの定義があります。

先ほど紹介した学習障害の特徴は、文部科学省による教育界の概念です。

  • 文部科学省の定義:「聞く・読む・話す・書く・計算する・推論する」能力の困難さ
  • 医学的な定義:「読字・書字表出・算数」の障害

次に、医学的な学習障害について紹介していきます。

読字障害(ディスレクシア)

読字障害(ディスレクシア)とは、文字を読む時に困難さの生じる状態です。

  1. 文字を正確に読むことができない
  2. 文字をなめらかに読むことができない

上記の2つのうちいずれか、もしくは両方の症状があります。

ひらがな・カタカナでは、読み間違いが生じやすく、漢字では読めなかったり覚えられなかったりします。「忘れた」と言う子もいます。

小さい「ゃゅょ」など拗音や、伸ばす音「ー」、つまる音「っ」があるとき、うまく読めない子もいます。

教科書やプリントの文字をうまく読めなかったり、読むのに時間がかかったりする場合があります。

書字表出障害 (ディスグラフィア)

書字表出障害(ディスグラフィア)とは、文字を書くことに困難さの生じる状態です。

文字を読んで理解したり、音読することはできるのに、文字を書くことが苦手だったり、時間がかかったりします。

  • ひらがな・カタカナを書くときに鏡文字になる
  • ますの中に文字をかけずにはみ出す
  • 漢字を書けない、思い出せない
  • 漢字を書くときに余分な点などを書いてしまう
  • 送り仮名を間違える
  • 句読点を使えない
  • 黒板の文字をノートに書き写せない

上記のような症状が出ることがあります。

学校の授業でノートをうまく書けなかったり、テストの時文字を書くのに時間がかかる場合もあります。

算数障害 (ディスカリキュア)

算数障害(ディスカリキュア)とは、計算や数学的な考え方に困難さの生じる状態です。

  • 数字の概念や、大小の理解ができない
  • 足し算や引き算をするときに指を使わないとできない
  • 九九や暗算ができない
  • 繰り上がりや繰り下がりのある計算ができない、間違える
  • アナログ時計を正しく読めない
  • 定規をうまく使えない

上記のような症状が出ることがあります。

計算だけではなく、推論する力や、時間の感覚などが分かりにくい場合もあります。

学習障害の原因

学習障害の原因は明らかになっていませんが、脳の情報処理や認知の仕組みの”くせ”ではないかと考えられています。

学習障害のタイプや、医学的な名称についても紹介しましたが、その区分は明確なものではなく症状も子どもによって様々です。

育て方やしつけ、家庭や学校の環境などによって発症するものではありません。

また、本人の努力不足でもありません。

学習障害が心配になったら

学習障害が心配になったら、まずは担任の先生に相談しましょう。

現在は学校が地域の窓口となり、対応を考えてくれる場合がほとんどです。

保護者の方の同意のもと、学校から医療機関や教育センターにも相談することができます。

入学前でしたら、入学予定の学校や、地域の保健センター・教育センターに相談してみましょう。

どんな検査をするの?

学習障害を診断するには、原因となる病気や障害がないかを調べることも必要です。

次のような検査が行われる場合があります。

  • 聴力検査・視力検査
  • 脳波検査
  • 知能検査・心理検査・言語検査
  • 学習障害の検査

医学的に明らかな原因がなく、知的発達の遅れもなく、学習障害の症状がある場合、学習障害であると判断されます。

学習障害と発達障害

学習障害は、知的な発達や発達障害が原因で起こるものではありませんが、発達障害と合併していることもあります。

  • ADHD
  • 自閉症スペクトラム
  • 知的障害
  • てんかん

これらの障害と間違われることもありますし、両方を併せ持っている場合もあります。

学習障害のサポート方法

学習障害は、本人の努力不足によるものではありません。

やる気はあるのに、うまくできなかったり、時間がかかってしまう状態です。

苦手な部分への配慮も必要ですが、得意なことや好きなことを伸ばすことが大切です。

「なぜできないの」「もっと勉強しなさい」というような言葉は、その子の自信をなくしてしまいます。

できないことや、苦手な部分ばかりに目を向けず、その子の長所を見つけてあげるようにしましょう。

その上で、苦手な部分への対応方法や、周囲の配慮を考えていくことが必要です。

学習障害のそれぞれの症状への対処については、今後詳しく紹介していこうと思います。

ことばのレッスンの流れ。まずは言葉や発音を詳しくチェックしてオーダーメイドの指導を

まとめ・終わりに

今回は、学習障害の特徴やタイプ、サポート方法について詳しく解説しました。

学習障害がある場合、苦手な部分への対応を考えるだけではなく、その子の長所を見つけて伸ばしてあげることが大切です。

KIZUKIは言語聴覚士による言葉と学習支援の教室です

KIZUKIでは、言語聴覚士による個別のレッスンを行なっています。

小学校の学習支援や、学習障害の症状のサポートに加え、プログラミングなど好きな活動も取り入れながら、長所や特技を伸ばしていきます。

ことばの症状だけではなく、学習についても気になることがあればお気軽にご相談ください。