指差しはいつから?1歳〜2歳で指差ししないのはなぜ?発語や自閉症との関係と練習方法
指差しは何歳ごろからできるようになるのでしょう。
指差しができない時には、言葉の発達への影響や、発達障害との関連はあるのでしょうか。
指差しと言葉の関係や、指差しの練習方法について、言語聴覚士が解説します。
指差しとは。指差しの種類と、できるようになる時期
本やインターネットなどで、指さしをしないことが自閉症などの発達障害の症状として紹介されていることがあります。
1歳半健診でも、指差しについて質問されたりチェックされることがあり、お子様が指差しできないことを指摘された方もいるかもしれません。
それでは、どうして「指さし」は子どもの発達において重要なのでしょうか?
「指差しできない」といっても、実は様々な種類の指差しがあります。
まずは、指差しの種類と、できるようになる時期の目安について解説していきます。
- 指差しの理解:9ヶ月ごろ〜
- 自発の指差し:10ヶ月ごろ〜
- 要求の指差し:1歳ごろ〜
- 共感の指差し(叙述の指差し):1歳〜1歳6ヶ月
- 応答の指差し:1歳6ヶ月ごろ〜
どの指差しはできていて、どれは難しいか、確かめながら読んでみてください。
指差しの理解(9ヶ月ごろ〜)
赤ちゃんは、急に自分から指差しできるようになるのではなく、まずは指差しの意味について理解できるようになるのが先です。
親が見ているものに気付くことができるのが、生後9ヶ月ごろからと言われています。これを専門用語では「共同注視」と言います。
指差しの意味に気づいて、親が指差した方向を見ることができるのも同じぐらいの時期です。
チェック:大人が「あ!」と言って、子どもの後ろを指差してみましょう。お子様は振り返って確認しましたか?
自発の指差し(10ヶ月ごろ〜)
指差しのもつ意味に気づいたら、次に自分でもできるようになっていきます。
まだ発語はなくても、例えば車をみて「あ!あ!」と言いながら自発的に指差しします。
子どもが「あ!」と言いながら何かを指さしていたら、できるだけ反応してあげましょう。「ブーブーだね」など語りかけて、言葉を聞かせてあげると良いです。
指差したものや手を伸ばしたものを一緒に大人も見てくれるんだ!と気付き、コミュニケーションの楽しさを知っていきます。
反応してもらえることで、指差しの頻度がさらに増えて、それがコミュニケーションの土台となっていきます。
この頃、指差しの形をするが難しい場合は、手のひらで方向を指すこともあります(手差し)。
チェック:お子様はみたものを自発的に指さしたり、手を伸ばすことがありますか?
要求の指差し(1歳ごろ〜)
欲しいものを指差して取ってもらうとするのが「要求の指差し」です。
これまでは、視界に入ったものを指差していましたが、徐々に欲しいものを取ってもらう要求の手段として指差しできるようになっていきます。
「あ!(あれ取って)」と指差すだけで、欲しいものを大人に取ってもらえたら便利だし、自分の気持ちが伝わって嬉しいですよね。
コミュニケーションや要求の手段として指差しを使うことができるようになるのは生後12ヶ月ごろです。
チェック:届かないところにあるものを指差して、大人に取ってもらおうとしますか?
共感の指差し(1歳〜1歳6ヶ月)
興味のあるものや、自分が見つけたものを大人に伝えるために指さすことを「共感の指差し(叙述の指差し)」と言います。
「あ!(みてみて、わんわんいるよ!)」と大人に伝えたくて指さしながら、大人の表情をみたりします。
指差しながら、お母さんやお父さんの表情を見て、興味や感動を分かち合おうとする時期です。
見た物を介して共感のためにやりとりできることは、社会性の発達においてとても重要です。
チェック:見たものを指差して大人に伝え、振り返って表情を確認しますか?
応答の指差し(1歳6ヶ月ごろ〜)
絵本や絵カードなどを使い、「犬どれ?」「車どれ?」と聞かれて指差しで答えることを「応答の指差し」と言います。
相手の質問を聞いて応答する力や、簡単な言葉の理解などの力が必要です。
1歳半健診でも、「犬どれ?」など言葉を言って、指差しで選んでもらう課題がある場合が多いです。
チェック:「犬どれ?」と聞いたら、いくつかの選択肢から犬の絵を選ぶことができますか?
指差しは言葉の発達の土台。発語への第一歩
このように、「指差し」と言ってもさまざまな手段があり、段階があります。
言葉を使わなくてもできるコミュニケーションや要求の手段で、言葉の発達の土台ともなるのが「指差し」です。
指差しすることでコミュニケーションの楽しさに気づくと、発語にも繋がっていきます。
どの「指差し」でつまづいているか、まずは分析してみてくださいね。
指差しをしない、できない理由
これまで、指差しの種類や、できるようになる時期について紹介しました。
それでは、1歳6ヶ月や2歳を過ぎても指差しできない時には、どのような原因が考えられるのでしょうか。
指差しはことばや社会性の発達のためにも重要なコミュニケーション手段ですが、なかには指差しの意味が自然には分からない子どももいます。
また、要求や応答の指差しはできるけど共感の指差しがなかったり、人の指差しに反応しない子どももいます。
指差ししても、指と物との間に空間があるので、意味が分からず指と物との見えない繋がりに気付きにくいこともあります。
このような場合、指差しの意味に気づくための練習や、物を介したやりとりの練習が必要になる場合もあります。
多くの場合は発達の個人差
指差しできる年齢は、あくまで目安です。
子どもの発達は個人差が非常に大きく、全員が同じようなスピード、同じ順序で発達するわけではありません。
指差しできなくても、その他の方法でコミュニケーションができていれば、過度に心配する必要はありません。
その他の方法とは、アイコンタクトや、遊びの中での人とのやりとり、言葉やジェスチャーなどです。
指差しができないと自閉症や発達障害?
自閉症や発達障害の症状として、本やインターネットなどで「指差ししない」「指差しても反応しない」と紹介されていることがあります。
確かに、自閉症など発達障害のある子どもは、指差しの意味に自然には気付きにくいことがあるようです。
しかし、指差しできないから自閉症であると断言することはできません。
その他の発達やコミュニケーションの様子についても総合的に判断する必要があります。
2歳を過ぎても指差ししない、おしゃべりできない、など気になる様子がある場合、まずは専門家に相談するようにしてください。
指差ししているつもりかも!手差しについて
興味のあるものや欲しい物には手を伸ばすけれど、指差しの形にならないという子どももいます。
赤ちゃんや幼いうちは、まだ指を一本ずつ器用に動かすことができません。
人差し指だけで指すことができないので、代わりに手を伸ばして伝えているのです。
手先がまだ器用ではないので指差しの形ができないだけで、子どもは指差ししているつもりだったりします。
専門用語ではありませんが、指ではなく手で指すので「手差し」と言うこともあります。
まずは手先で問題ありませんし、手差しできていれば、指差しまであと一歩の状態です。あとで紹介する方法で、指差しの練習を行ってみてください。
クレーン現象について
「クレーン現象」についてもよく相談を受けるため、ここでは簡単に解説します。
クレーン現象とは、自分で届く範囲にある物を自分で取らずに、親の手を持って取らせる現象のことを言います。
何かをして欲しい時に親の手を引っ張って行って叶えてもらったり、応答するときに親の手を取って指差しさせようとすることもあります。
クレーン現象も、自閉症など発達障害の症状として紹介されていることがありますが、クレーン現象があるから発達障害というわけではありません。
クレーン現象は言葉の遅れがあったり、言葉で表現することが苦手な子どもに多いです。
こちらも、あとで紹介する方法でクレーン現象から指差しの形へとさりげなく置き換えてあげると良いでしょう。
指差しの練習方法
成長を待っても自然に指差しできるようにならない場合、指差しの意味が自然には理解しにくいお子様かもしれません。
練習すると良いのですが、手を取って無理やり指差しさせてもあまり効果的ではありませんし、定着しません。
お子様が自分から手を伸ばしたタイミングで、さりげなく指差しの形へ導く方法がおすすめです。
練習方法を紹介しますので、お家で取り組んでみてください。
- 大人の指差しに注目する練習
- どっちが欲しいか選ぶ練習
- 欲しい物を指差しで伝える練習
ステップ1:大人の指差しに注目する練習
音の出るおもちゃや楽器、好きな絵本やおもちゃを用意しましょう。
大人が「あ!ブーブー(車)」「あ!アンパンマン」など言いながら、子どもの興味がある物を指差して見せましょう。
興味のあるおもちゃや絵本を介して、まずは大人が身近な物を指差して見せることで、指差しの理解へと繋がります。
もし子供が指差したものを興味を持って見たり、真似して手を伸ばしたりしたら、一緒に楽しく遊んでください。
ボタンのついた図鑑を使ったり、好きなおもちゃやおままごとの道具を大人が指差して取ってもらうという方法もあります。
ステップ2:どっちが欲しいか選ぶ練習
子供が大好きな物と、あまり好きでない物を用意してください。
例:「トミカのおもちゃと、あまり興味がない絵本」「大好きなお菓子と、普通のお菓子」など
2つのものを見せて、どちらか選んでもらいましょう。
まだ発語がない場合も、おそらく大好きな方に手を伸ばすのではないかと思います。
上手に選べたら、褒めてあげながら手渡しましょう。
ステップ3:指差しで選ぶ練習
2つから手を伸ばして選ぶことが上手になってきたら、指差しの形の練習をしましょう。
いつも通り選んでもらうとき、手を伸ばしてもすぐには手渡さずに、指差しの形を作りましょう。
まずは伸ばした手に親が上から手を添えて、指差しの形を作ってあげてください。
子どもの手を覆うように手を重ね、人差し指以外を包むようにすると、指差しの形ができます。
完璧ではなくても良いので指差しに近い形ができたら、大げさに褒めてあげながらすぐにご褒美を手渡してあげてください。
指差しの形にこだわって時間がかかりすぎると良くありません。形は気にせずに素早く行いすぐに褒めるのがコツです。
手差しやクレーン現象をしている場合も、手を伸ばしたタイミングで指差しの形を作ったり、指差しに置き換える練習を行いましょう。
まとめ・終わりに
今回は、指差しの種類やできるようになる時期、指差しができない場合の練習方法について解説しました。
指差しは重要なコミュニケーション手段の一つです。自然にできるようにならない場合、手を添えて練習すると効果的な場合があります。
もし、指差し以外にも発語の遅れ等の心配な点がある場合には、早めに専門家に相談してくださいね。
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