インリアルアプローチとは?発語を促すために効果的な接し方・ことばかけを解説
発語の遅れが気になって相談にいくと、「たくさんことばを聞かせてあげて様子をみましょう」などのアドバイスを受ける場合が多いようです。
ただ具体的にどうすれば良いかって分かりにくいですよね。
発語を促すためにご家庭でできる接し方や具体的なことばかけについて、「インリアルアプローチ」に基づくやり方を言語聴覚士が解説します。
「ことばのシャワー」は本当に効果があるの?
ことばが増えないことが心配になって、自治体や病院、療育施設などで相談しても、具体的なアドバイスをもらえないことがあります。
例えば、「たくさん話しかけましょう」「ことばをたくさん聞かせましょう」「もう少し様子をみましょう」などと言われたら、具体的にどうすれば良いのでしょうか。
確かにことばを聞かせることはとても大切なのですが、一日中がんばって話しかけたり、絵本を読み聞かせしようとしても、あまり効果的ではない場合もあります。
私たち大人も、聞いたことのない外国語の会話を一日中聞いても、理解が難しいのと一緒です。
子どもにとって、受け取りやすい、理解しやすい方法とタイミングで、話しかけてあげる必要があります。
今回は、子どものことばを引き出すための良い接し方や話しかけ方について紹介します。
家庭でことばを引き出すために「インリアル」を取り入れよう!
ことばは、子どもと大人の相互的なやりとりのなかで育まれます。
子どもと大人が相互的に反応し合いながら、ことばやコミュニケーションを引き出す方法に、インリアルアプローチがあります。
伝統的な方法なのですが、家庭でも取り入れられる良い部分がたくさんあるので紹介していきます。
インリアルアプローチとは?
インリアルアプローチとは「こどもとおとな(親や保護者)が相互に反応し合うことで、学習とコミュニケーションを促進してことばを発達させる手法」です。
インリアルは英語では「INter REActive Leaning and communication」の略称でINREALと表現されます。
インリアルアプローチは1974年にアメリカのコロラド大学のWeiss博士らによって開発されました。
開発されてから5年後の1979年には、大阪教育大学の竹田契一教授によって日本でもインリアルアプローチが提唱されるようになりました。
こどもの発語を増やすための手法として、インリアルアプローチは言語聴覚士による言語訓練でもよく用いられています。
KIZUKIで行っている保護者の皆さまへの言語指導も、インリアルアプローチを取り入れています。
インリアル(INREAL)の特徴と原則
インリアルを取り入れる上で基本的な考え方を紹介します。
- 自由な遊びや生活のなかで、自然な形でコミュニケーションを楽しむ
- 何かを無理やりやらせたり、ことばを言わせようとしない
- 子どもが自発的に遊びに取り組んだり、自分からやりとりできる力を育む
ことばは、無理やり教えるものではなく、大人との相互的なやりとりの中で育まれていくという考え方です。
自由な遊びや生活場面のなかで、コミュニケーション行動を増やし、ことばを引き出していきます。
SOUL:子どもに接するときの基本姿勢4つのポイント
大人が子どもに接する上での大切なポイントを紹介します。
- S:Silence(静かに見守る)
- O:Observation(よく観察する)
- U:Understanding(深く理解する)
- L: Listening(耳を傾ける)
頭文字をとって、SOULと呼ばれます。
1つ目の S:Silence(静かに見守る)に注目してみてください。
子どもにたくさん話しかけるようアドバイスをもらったことのある方は、「あれ?」と思われたかもしれません。
実は、とにかく話しかければ良いのではなく、まずは沈黙して少し待ち、子どもを見守る姿勢がとても大切です。
子どもが自分から行動をするまで少し待つことにより、子どもの積極性を育み、自発的な発語へとつなげることができます。
また、子どもをよく観察して、理解し、さりげなく必要なサポートをしてあげたり、子どものサインやことばに耳を傾ける姿勢がとても大切です。
大人のことばかけ:言語心理学的技法
これまで紹介してきた接し方を守りながら、次に挙げる言語心理学的技法を使ってことばを引き出していきます。
- ミラリング:子どもの行動をまねする
- モニタリング:子どもの声やことばをまねする
- パラレルトーク:子どもの行動や気持ちを代わりにことばにする
- セルフトーク:大人の行動や気持ちをことばにして聞かせる
- リフレクティング:子どもが言い誤ったら正しいことばをすぐに聞かせる(言い直させない)
- エキスパンション:子どもの発したことばの意味を広げて聞かせる
- モデリング:子どもに新しいことばのモデルを示す
分かりにくい部分もあると思いますので、例を紹介します。
- ミラリング:例:子どもが手を叩く→大人も手を叩く
- モニタリング:例:子どもが「あー!」と言う→すぐに大人も「あー!」と言う
- パラレルトーク:例:子どもが無言で車のおもちゃで遊んでいる→「ブーブーだね」「くるま走る、だねー」と聞かせる
- セルフトーク:例:大人がボールを転がしながら「ボール、ころころー」と言う
- リフレクティング:例:子どもが猫をみて「わんわん!」→「にゃーにゃーだね、猫だね」と正しく言う。言い直させない
- エキスパンション:例:子どもが「あ!ブーブー!」と言う→「ほんとだ、ブーブー走る」「青のブーブー」など意味を付け加えて返す
- モデリング:例:おもちゃで遊んでいるとき、「楽しい!」「できた!」などことばを聞かせる
まずは、子どもの行動や声を真似することが大切なんですね。
発語が増えてきたら、そのことばをまずは受け止めて、さらに意味を広げたり新しいことばの使い方のモデルを聞かせていくと言葉が増えていきます。
ことばや発達の専門家である言語聴覚士に相談しよう
言語聴覚士とは、ことばや発達のサポートをする国家資格です。
KIZUKIでは、言語聴覚士によることばのレッスン(言語指導・言語訓練)を実施しています。
個別のレッスンにて、遊びの中で効果的にことばを引き出す方法をお教えしています。
ことばの検査や、発達検査もご希望に合わせて行い、その子に適したプログラムを作成することができます。
お子さんの発語について心配になったら、ぜひご相談くださいね。
まとめ・終わりに
今回は、ことばの遅れがあって相談に行ったけれど、家庭で様子をみましょうと言われた場合どうすれば良いか、具体的な接し方について紹介しました。
まずは子どもの自発的な行動や発声を待って、適切な反応を返すことによって、コミュニケーションは増えていきます。
こどもとおとなの相互的なやり取りを通じて学習とコミュニケーションを促進し、発話を促すインリアルアプローチのやり方を説明しました。
今回紹介したインリアルアプローチをぜひご家庭でも取り入れてみてくださいね。
KIZUKIレッスンのお申し込みについて
KIZUKIでは、言語聴覚士によることばのレッスンを行っています。
お子さまのことばについて気になったら、どうぞお気軽にご相談くださいね。