口唇口蓋裂の種類と発音について。見た目でわからない粘膜下口蓋裂とは
口唇口蓋裂とは、生まれつき口の中の天井の部分(口蓋)や唇に裂け目のある状態です。
日本では500人に1人に生じると言われ、決して珍しくはありません。
口唇口蓋裂は手術によって治りますが、中には発音の問題が残ってしまう場合もあります。
また、発音が気になるという相談を受けたところ、実は見た目ではわからない粘膜下口蓋裂があったという例もあります。
今回は、口唇口蓋裂の種類と発音(構音)について、言語聴覚士が解説します。
口唇口蓋裂の種類
口唇口蓋裂は、どの部分に裂け目があるかによって、いくつかのタイプに分類されます。
- 軟口蓋裂(なんこうがいれつ)
- 硬軟口蓋裂(こうなんこうがいれつ)
- 口唇裂(こうしんれつ)
- 唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)
- 粘膜下口蓋裂(ねんまくかこうがいれつ)
口の中の天井(舌の当たる上の部分)のことを「口蓋」と言います。
口蓋の、奥の方の喉に近い部分の天井を軟口蓋、入り口に近い部分を硬口蓋と言います。
裂のある場所によって、口蓋の奥の方のみに裂がある場合を軟口蓋裂、前の方まで裂が続いている場合を硬軟口蓋裂、唇まで裂が続いている場合を唇顎口蓋裂、唇のみに裂がある場合を口唇裂、のように分類します。
さらに、片側のみに裂があるか、両側に裂があるかによって、片側性唇顎口蓋裂、両側性唇顎口蓋裂、といった言い方をします。
どのタイプであったとしても、基本的には手術で綺麗に治りますので、心配しすぎる必要はありません。
見た目ではわからない粘膜下口蓋裂について
他のタイプの口蓋裂は見た目で分かりますが、粘膜下口蓋裂は外からは分からないために見逃されている場合があります。
粘膜下という名前の通り、一見正常な粘膜の下の筋肉に裂が生じている状態です。
粘膜下口蓋裂があると、発音があいまいになったり、開鼻声という鼻声のような状態になったりします。
発音が気になるという相談を受けて検査をしてみると、粘膜下口蓋裂であったという例もあります。
粘膜下口蓋裂の疑いがある場合、医療機関での手術が必要になる場合もあります。
口蓋裂のある子の言語発達と発音について
口蓋裂があっても、手術をすればほとんどの場合で見た目には分からないほどに治りますので、心配はいりません。
しかし、口蓋裂のあるお子さまは、生まれつきお話のしにくい状態であるため、発語が遅れることがあります。
発達の遅れがなく口蓋裂のみの問題である場合、ことばの発達がゆっくりであっても、ほとんどの場合は追いつきます。
しかし、なかにはケアが必要な場合もあるため、定期的な発達検査や言語検査をおすすめしています。
また、手術後にも、発音の問題が残ることもあります。
発音の問題のことを構音障害と言い、構音障害は適切な構音訓練で改善させることができます。
口蓋裂のある子には構音訓練が必要になるかも
口蓋裂があると鼻咽腔閉鎖機能の問題が生じることがあり、発音の異常も生じやすくなります。
口蓋裂自体は手術で治りますが、発音のくせがついてしまっている場合、構音訓練が必要になる場合もあります。
口蓋裂の子に生じる可能性のある構音障害の種類を列挙してみます。
- 声門破裂音
- 咽頭摩擦音
- 咽頭破裂音
- 口蓋化構音
- 側音化構音
- 鼻咽腔構音
※口蓋裂ではない子どもに生じることもあります。
これらは異常構音と言い、発達途上には通常みられない「正しくない発音や発声のくせ」がついてしまっている状態です。
発達途上にみられる発音の間違いであれば、自然に治ることも多いです。
しかし、上記のようなくせがある場合は、言語聴覚士による構音訓練が必要になります。
終わりに
口唇口蓋裂や粘膜下口蓋裂は決して珍しいものではなく、手術で治すことができます。
しかし、ことばの遅れや発音の問題(構音障害)が生じることもあるため、相談できる言語聴覚士を見つけておくと良いです。
KIZUKIでは、言語聴覚士による発音の評価や、発音の練習(構音訓練)も行っています。
どうぞお気軽にご相談くださいね。
まとめ
- 口唇口蓋裂には症状によって様々な種類がある
- 見た目では気づきにくい粘膜下口蓋裂もあるため注意が必要
- 口蓋裂があっても手術で治るが、ことばの発達や構音の問題が残ることもある
- 構音障害にも様々なタイプがあり、タイプに合わせた構音訓練で改善させることができる