特定の音を嫌がったり声への反応が少ないのは、聴覚過敏や感覚調整の問題かも
聴覚に対して過敏や鈍感さがある場合、感覚調整の問題が隠れている場合があります。
今回は感覚統合の考え方に基づき、音の受け取り方の問題と、対処法について紹介していきます。
感覚の調整のトラブルとは?
お子さまに次のような様子はありませんか?
- 大きい音や特定の音を怖がる
- 突然音がすると耳をふさいだりパニックになる
- 保育園や幼稚園でスピーカーからの音を怖がる
- 人ごみや騒々しい場所に行きたがらない
- テレビや掃除機など音のでる家電をつけると泣く
- 聴力は正常なのに声かけへの反応が少ない
このような様子がある場合、聴覚の感覚調整や音の受け取り方の問題がある場合があります。
感覚の受け取り方は人それぞれ
人は様々な感覚を受け取りながら生活していて、感覚の受け取り方は、人それぞれ異なります。
例えばジェットコースターなどの絶叫系の乗り物が好きな人もいれば苦手な人もいますし、少しのにおいに敏感な人もいればあまり気にしない人もいますよね。
聴覚の場合も同じです。
音を脳で受け取って調整する機能にトラブルがあると、聴覚過敏などの問題が生じることがあります。
聞こえ方の調整の問題とは
聴力や耳の機能が正常であるのに、音に対する反応が少なかったり、過敏すぎてしまう場合、
音を受け取って脳で聞こえ方を調整する機能にトラブルがあるかもしれません。
聞こえ方の調整とはどのような機能でしょうか。
例えば、私たちは人ごみや電車の中などで、環境音があるにもかかわらず会話相手の声を聞き取ることができますよね。
これは、周囲の環境音をなるべく抑制して、会話相手の声を受け取ることができるように脳が調整しているためです。
もし、この機能がうまく働かず、すべての音を同時に受け取ってしまったとしたらどうなるでしょう。
人々の話し声や、少しの物音が、うるさく頭に響き続けます。とても苦痛に感じるかもしれません。
特定の音にパニックになるのはなぜ?
テレビの音や、スピーカーの音楽、掃除機の音など、特定の音を嫌がる子たちもいます。
考えてみると、私たちも苦手な音ってありますよね。
例えば、黒板をひっかく音や、発泡スチロールをこする音など、不快に感じる方も多いと思います。
苦手な音が耳元で大きく聞こえたとしたら耳をふさぎたくなります。
聴覚過敏のある子どもは、同じように特定の音に対して敏感に反応したり、嫌な音を学習して音の出る機械(スピーカーなど)を見るとパニックになってしまったりします。
聴力は正常なのに声かけへの反応が少ないのはなぜ?
名前を呼んでも反応が少なかったり、聞こえていないように見えることがあるので聴力検査をしたところ正常であった、ということはよくあります。
考えられる原因
- 言っていることばの理解ができていない
- 周囲の音に気を取られてしまって、人の声を選択して聞き取ることが難しい
ことばの理解も成長に伴って発達していきます。
ことばの理解が発達途上であるために、言っている内容を理解できずに指示に従えず、聞こえていないように見えることもあります。
これは比較的よくある状態です。
考えられるもう一つの原因は、人の声を選択して受け取る機能や注意の問題です。
人の声を選択してうまく受け取ることができないと
周囲の物事や、目に入ったもの、その他の環境音に気を取られてしまい、声を聞き取ることができなくなったりします。
聴覚過敏がある子への対処法
苦手な音を無理に聞かせたり、克服させようとしてはいけません。
私たちも、黒板をひっかく音とか、発泡スチロールをこする音とか、不快な音を克服しようとして大音量で聞いても、つらいだけですよね。
子どもとっても、無理やり音に慣れさせようとしても苦痛や恐怖を抱かせるだけで効果的ではありません。
痛みやめまいなどを伴う子もいるため、無理に何度も聞かせないようにしてください。
試してみると良い方法を紹介します
- 子ども自身がこのぐらいなら大丈夫と思える音を見つける
- 音を出す前に予告したり、音をコントロールできるようにする
- 好きな音や平気な音を使った遊びや活動を増やす
- 別の部屋に行くか、イヤーマフを使用する
ひとつずつ解説していきます。
1.子ども自身がこのぐらいなら大丈夫と思える音を見つける
- スピーカーから出る音を小さくしてみる
- 音源から離れさせてみる
- 他の音の出る機械やおもちゃを試す
このような工夫をして、不快ではない音の大きさや種類を探してみましょう
この音なら大丈夫、この大きさなら大丈夫、と子ども自身が思える音を見つけることが大切です。
平気な音が増えれば、今後のコントロールもできますし、受け入れられる音が増えていくこともあります。
2.音を出す前に予告したり、音をコントロールできるようにする
唐突に大きな音が出るとびっくりしますよね。
聴覚過敏のある子どもは、急に大きな音が出るとパニックになってしまうこともあります。
- 音が出る前に声かけして知らせる
- 子ども自身にスタートボタンを押させる
- 子ども自身に音量をコントロールさせる
音が予期やコントロールできるものとわかれば、徐々に受け入れられるようになる可能性もあります。
3.好きな音や平気な音を使った遊びや活動を増やす
好きな音や平気な音を使った遊びが効果的です。
楽器や音のでるおもちゃなど、好きな活動からはじめて、好きな感覚を楽しめる時間を増やします。
強要せずに、楽しい気持ちで様々な音に接することで、受け入れられる音が増えていくこともあります。
4.別の部屋に移動したり、イヤーマフを使用する
1〜3を試しても難しい場合も多いです。
その場合は、音が出たら別の部屋に移動するとか、イヤーマフを使用するようにします。
音のでるお遊戯や音楽の時間を別室にするなどの配慮も必要になります。
パニックになる前に自分で移動したり、イヤーマフをつけることができるようになれば、子どもも安心して生活できるようになり、情緒も安定してきます。
ノイズキャンセリング機能のついたヘッドフォンを利用しても良いでしょう。
終わりに
今回は、感覚統合の考え方をもとに、聴覚過敏などの問題と対処法について紹介しました。
KIZUKIは言語聴覚士による個別の発達支援の教室です。
聴覚過敏について気になったら、お気軽にご相談くださいね。
まとめ
- 特定の音を嫌がったり、声への反応が少ない場合、音の受け取り方の問題があるかも
- 聴覚過敏がある場合、音への苦痛や恐怖感を感じている場合もあるため、無理に聞かせてはいけない
- 子どもが音をコントロールできるようにしたり、大丈夫な音を見つけることが大切
- 無理しないように、音が出る場面の回避やイヤーマフの使用も検討する