吃音のある小学生の子どもの支援。子どもが吃音を治したいと言ってきたらどうすれば良いの?
吃音とは、音を繰り返したり、音がつまったりして、なめらかにお話のできない状態のことを言います。
吃音のある子どもは、無理に症状を治そうとするのではなく、ありのままを受け入れてあげることが大切と言われています。
では、子ども自身が自分の吃音に気付いて、吃音を治したいと言ってきたらどうすれば良いのでしょうか?
吃音のあるお子様へのスピーチセラピーについて、言語聴覚士が解説していきます。
子どもの吃音について
吃音とは、次のような症状があってなめらかにお話できない状態のことを言います。
- 音の繰り返し:「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくね」のように音を繰り返す
- 音の引き伸ばし:「ぼーくね」のようにはじめの音を引き延ばす
- ブロック:「、、、っ、ぼくね」のようにはじめの音が出にくくなる
幼児期の吃音は、自然に治る場合も多いのですが、中には成長しても症状が残る場合もあります。
子どもの吃音について詳しくはこちらのページをご参照ください。
吃音は「気にしなければ治る」は間違い
幼児期の吃音について相談にいくと「気にしないようにしましょう」と言われることがあります。
確かに、幼児期の子どもに吃音の症状があったとしても、親や周囲が吃音の症状について指摘したり、アドバイスをするべきではありません。
しかし、ここで注意が必要なのですが、「気にしないように」という言葉は、吃音は親や本人が気にしなければ治るという意味ではありません。
吃音について気づかないフリをしたり、話すことを避けるのではなく、吃音の症状がある子どものありのままを受け入れることが大切です。
吃音の症状への自覚が生まれたら
吃音が発症することの多い時期は、3歳ごろであると言われています。
3歳ごろの子どもは、吃音の症状があったとしても、自分の症状に気付いていなかったり、気にしていないことがほとんどです。
この頃の症状には「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくね」のように音を繰り返す連発症状が多いのが特徴です。
子どもはいつ自分の話し方の特徴について気づくのでしょうか?
吃音の症状に気づく時期と、症状の変化、周囲の良い接し方について紹介していきます。
子どもが吃音の症状に気づく時期
子どもが吃音の症状に気づく時期には個人差がありますが、5歳〜小学校低学年頃のことが多いです。
自分の話し方がお友達と違うことに気づいたり、話したいことがたくさんあるのになめらかにお話ができないことにイライラしたりします。
「なんでぼくはこういう話し方なの?」と聞いてくる子どももいます。
その時に、親が焦って話題を変えようとしたり、吃音についてはぐらかそうとしたりすると、子どもは話し方についての悩みを一人で抱えてしまうことになります。
吃音について話すことを避けずに、子どもの悩みをオープンに話せる環境作りが大切であると考えられています。
吃音の症状を自覚する時期には症状が進展することも
吃音を自覚する前の子どもは、「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくね」のように音を繰り返す連発症状が多いと述べました。
吃音を自覚する頃には、次のような新しい症状が増えることもあります。
- ブロック:初めの音がつまって出なくなる「・・・・っ、ぼくね」
- 挿入:お話の間に「あー」や「えっと」などのことばが多くなる
- 随伴症状:ことばが出にくいとき体のどこかを動かす(首をふる、手で体を叩く、息を吸い込むなど)
- 中止:お話しようとするが、ことばが出にくいため話すのをやめてしまう
吃音を隠したい、”どもりたくない”、という気持ちが強いと、4のようにおしゃべり自体を避けるようになってしまう場合もあります。
つっかえても大丈夫だよ、というメッセージを周囲が伝え続けていくことが必要です。
子ども自身の「吃音を治したい」という気持ちを無視しない
3歳前後に発症した幼児期の吃音の場合、小学校に入る頃にも症状が残っていたら残念ながら自然には治りにくい状態かもしれません。
吃音というのはとても複雑な問題です。
特別な治療や訓練を受けて子どもが努力すれば治るという単純な問題ではありません。
では、子どもが吃音を治したいと言ってきたらどうすれば良いのでしょうか?
支援者によっていろいろな考え方がありますが、KIZUKIでは、お子さんに対して「そのうち治るよ」とか「治らないから受け入れよう」とか、どちらも言わないようにしています。
子ども自身の「吃音を治したい」という気持ちを受け入れて、楽にお話しやすくなる方法を一緒に考えて練習したりしています。
吃音のある子どもへのスピーチセラピーについて
子どもに対する吃音支援の方法は、専門家により様々な意見があります。
ここでは、KIZUKIで行っている、小学生以上のお子さんへの支援について紹介していきます。
まずは吃音について学ぼう
小学生以上のお子さんの場合、自分の話し方についてすでに気づいていることが多いです。
どうして自分はお友だちのようになめらかに話せず、どもったりつかえたりする話し方になるのか、不思議に思っています。
まずは、どもったりつかえたりする話し方について「吃音」という症状の名前があることについて知ることが大切です。
吃音について学び、吃音の症状が起きる時には、口の中の動きや筋肉の状態がどのようになっているのか勉強して知識をつけていきます。
吃音が生じるときの原理についてわかれば、症状への対処の仕方もある程度わかっていきます。
もし誰かから話し方についてからかわれることがあったとしても、吃音についての正しい知識があれば自信を持ってやりとりすることができます。
スピーチセラピーの内容
- 教室や講師に慣れてリラックスできる状態を作る
- 吃音について話したり、吃音の知識を身につける
- 楽な話し方で会話をする練習
- プログラミングや工作など、好きな遊びを通して、子どものありのままを受け入れる活動
吃音の指導の際には、リラックスできる雰囲気作りが大切です。
子どもの好みに合わせて遊びや活動をしたり、吃音とは関係のないお話をしたり、まずは緊張を解いてお話できる関係を目指します。
次に、話し方や吃音についての話を振ってみます。吃音について話すことに抵抗がなければ、吃音についての学習を始めます。吃音についての学習は、本を読んだり、他のお友達の例を紹介したり、クイズをしたりと、いろいろな方法で行います。
吃音について学んだら、次は楽な方法でお話する練習をしていきます。
大きな声や小さな声、早いスピードや遅いスピード、音を繰り返したり伸ばしたり、様々な声の出し方をしてみたりする中で、どのような方法でお話すれば良さそうか考えます。
また、吃音の症状が出た時にうまく力をぬく方法について練習したりもします。
吃音の症状があってもお話しやすくなるコツを伝えて、実際にお話したりします。
スピーチセラピーの目標は、吃音の症状をゼロにすることではありません。
吃音の症状もありのまま受け入れて、楽しくやりとりする経験を積み自信をつけることが大切です。
吃音について話さなければいけないとか、話し方の練習をしないといけないと思わせてしまっては逆効果になります。
話し方にこだわらず、好きな活動をしたりお話をして過ごすこともあります。
話し方を気にせず好きな活動をしている時には、吃音の症状が軽くなるというお子さんもいます。
まとめ・終わりに
今回は、小学生以上の子どもの吃音支援の方法と、子どもが自分の吃音に気づき治したいと言ってきた場合に具体的にどうすれば良いか紹介しました。
今回紹介した以外にも、学校や家庭での環境調整も大切です。
KIZUKIでは言語聴覚士によるスピーチセラピーを実施しています。
お子さんの吃音について気になったら、どうぞお気軽にご相談くださいね。