子どもに多い言い間違いと周囲の良い接し方。エレベーターをエベレーターと言うのはなぜ?

2020年4月10日

子どもが、エレベーターを「エベレーター」と言ったり、牛乳を「にゅうぎゅう」と言ったりする言い誤りはなぜ起きるのでしょうか?

今回は子どもに多いことばの言い誤り・言い間違いと、周囲の良い接し方について言語聴覚士が解説していきます。

幼児期によくあることばの誤り方について

幼児期に多い言い誤りは、いくつかのパターンに分類できます。

まずは、幼児期によくあることばの間違え方について、例を挙げながら紹介していきます。

音位転換:単語中の音が入れ替わる間違い

タイトルにもある、エレベーターを「エベレーター」と言うような言い誤りを、音位転換と言います。

次の例ように、単語の中の音の並びが入れ替わります。

  • エレベーター→えべれーたー
  • とうもろこし→とうもころし
  • お薬→おすくり
  • お片付け→おたかづけ
  • 牛乳→にゅうぎゅう
  • 体→かだら
  • ハンバーガー→はんがーばー など

省略:単語中の子音を省略する間違い

  • コップ→おっぷ
  • テレビ→てえび
  • 葉っぱ→あっぱ
  • ご飯→ごあん
  • みかん→いあん など

置換:単語中の音を言い換える間違い

  • さかな→たかな
  • ライオン→だいおん
  • キリン→ちりん
  • お母さん→おたあたん
  • ねこ→ねと など

今回の記事でご紹介するのは、1番目の「音位転換」と言う誤り方です。

2番目と3番目の「省略」や「置換」の間違え方は、発音の発達途上によく見られます。

発音についてはこちらのページをご参照ください。

子どもの発音が聞き取りにくい時には練習が必要?発音・滑舌改善訓練を始める時期について

音位転換が生じる3つの理由

エレベーターを「えべれーたー」と言うような、音位転換の誤り方は、幼児期によく見られますが大人にも起きる現象です。

  • 音位転換:単語中の音の順序が入れ替わる現象

雰囲気を「ふいんき」と言ったり、シミュレーションを「しゅみれーしょん」と言うような言い誤りを耳にしたことはありませんか?

このように、大人でも音位転換している場合もあるんですね。

ここでは、特に幼児期に音位転換が生じやすい理由を3つ挙げます。

  • ことばが発達途上の場合
  • 音韻意識が発達途上の場合
  • 言いにくいことばを言い換えて言っている場合

詳しく説明していきます。

プログラミングトイの遊びを通して、試行錯誤を繰り返しプログラミング思考を学ぶ

ことばの学習が発達途上の場合

ことばの発達途上のお子さんの場合、言いたいことばを正しく思い出せないことがあります。

なにかお話したいときに、正しいことばを思い出せなくて、あいまいなことばの記憶のままお話したりします。

ことばや発音(構音)がまだ発達途上で、正しい言い方が定着していないとき、言い誤りが生じるのは普通のことです。

音韻意識が発達途上の場合

音韻意識ということばを初めて聞いた方も多いかもしれません。

日本語にはひらがな・カタカナがありますよね。

音韻意識は、ひらがな・カタカナの単位で考えて頂くと理解しやすいです。

  • 「ねこ」ということばは、「ね」「こ」の2つの音によりできています。
  • 「車」ということばは、「く」「る」「ま」の3つの音によりできています。
  • 「エレベーター」ということばは、「え」「れ」「ベー」「たー」と複数の音によりできています

このように、ことばを構成する「音」に気付くことを「音韻意識」と言います。

音韻意識は、文字に興味を持つ頃に高まってくることが多いのですが、個人差もあります。

音韻意識の発達途上の子どもは、ことばを構成する音一つひとつにはまだ気付いておらず、「ねこ」「くるま」「エレベーター」という音のかたまりで認識しています。

音韻意識が未発達だと、音のかたまりを耳で聞こえた通りに言っている状態ですので、言い誤りが多くなります。

言いにくいことばを言い換えて言っている場合

実は、子どもが言い誤りやすい単語はある程度共通しています。

「エレベーター」「とうもろこし」「おくすり」などです。

これは、これらのことばを作る音の順序が子どもにとって言いにくいからです。

子どもは言いにくい単語を発音するとき、少しでも発音しやすい言い方にしようとして、音の順序を入れ替えて言うことがあります。

特に、発音しにくい順序のことばで、言い誤りはよく起きます。

実はこのような誤り方は大人にも見られますし、その誤り方が社会的に定着してしまうこともあります。

  • 「秋葉原(あきはばら)」という地名の読み方は、元々は「あきばはら」だったという説があります。
  • 「新しい(あたらしい)」と言う単語の読み方は、元々は「あらたしい」だったそうです。

多くの人にとって、なめらかに言いやすい方の言い方が定着していったのかもしれませんね。

未就学児の子どもは、発音(構音)の発達段階ですので、言いにくいことばを言いやすい順序で言い換えて言うことは珍しくありません。

子どもの言い間違いに対してどうすればいいの?

紹介したように、子どもがことばを言い誤りやすい理由は様々あり、組み合わさって生じている場合もあります。

子どもの言い誤りは、発達途上でとてもよくみられる現象です。

ことばの正確さに気を取られずに内容を受け取る

ことばの発達途上の子どもがまだ正しいことばを使えないのは普通のことです。

お子さんが一生懸命ことばを伝えようとしているとき、その内容をまずは受け止めてあげることが大切です。

発音や音の順序が間違っていたとしても、言い直させる必要はありません。

ことばの見た目よりも、ことばの「内容」に注目してお話するようにしましょう。

正しい言い方のモデルを聞かせる

ことばは耳で聴いて覚えて、試行錯誤しながら正しく使えるようになっていきます。

子どもがことばを言い誤っていた場合、子どもに言い直させる必要はありません。

周囲の大人がさりげなく正しいことばで復唱してあげることが効果的です。

子ども「にゅうぎゅう!」→ 大人「そうだね、牛乳だね」

このように、子どもの言葉を受け止めてから、さりげなく正しいモデルを示してあげてください。

子どもは正しい言い方を耳できいて覚えていきます。

専門家による言語指導や発音指導が必要な場合も

多くの場合良い誤りは自然に治っていきます。

しかし、なかには小学校に入る頃にも自然に言い誤りが治らない場合もあります。

  1. 構音(発音)障害があって言えない音がある場合
  2. 音韻認識が自然に発達しなかった場合 などです。

練習が効果的な場合もありますので、心配な場合は言語聴覚士などの専門家に相談されてみてください。

まとめ・終わりに

今回は、子どもに多い言い誤り方の種類と、音位転換の生じる理由、周囲の接し方について紹介しました。

幼児の言い誤りは、耳で聴いて試行錯誤しながら正しく言えるようになることが多いので、無理に言い直させずに成長を見守ることも大切です。

しかし、なかには早めの支援が必要な場合もあります。

成長を待っても自然に治らない場合は、言語聴覚士などの専門家に相談するようにしてください。

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