子どものオウム返し(エコラリア)はいつまで続く?発達障害との関係も解説
子供のおうむ返しの発語は可愛いけれど、うまく会話にならないと少し気になりますよね。
今回は子供がオウム返しのようにことばを繰り返して言う理由と対策について、言語聴覚士が解説します。
オウム返し(エコラリア)とは?
まずは、オウム返しの種類と例を紹介します。
大きく分けて次の2通りのオウム返しがあります。
会話や挨拶でのオウム返し
- 大人「ごはんだよ」子ども「ごはんだよ」
- 大人「ただいま」 子ども「ただいま」
- 大人「上手だね」 子ども「じょうずだね」
- 大人「これ何?」 子ども「これなに?」
- 大人「わからないの?」 子ども「わからないの?」 など
大人が話しかけたことばを、すぐに繰り返して言います。
質問に対して適切に答えずに、聞こえた通りに繰り返して言うこともあります。
また、全てのフレーズではなく、一部の音や単語を繰り返して言う場合もあります。
このように、聞いたことばをすぐに繰り返して言うことを、専門用語では即時エコラリア(反響言語)と言います。
以前聞いたことばを覚えてオウム返し
- テレビCMの、歌・ことば・フレーズを関係のない時に言う
- 「アンパンマン」など好きなキャラクターの名前を関係のない時に言う
- 朝聞いたことばを、夜や次の日になっても繰り返して言う など
テレビのCMや、大人の会話など、耳にしたことばを、時間をおいて繰り返して言います。
独り言のように言っていることもありますし、場面にそぐわないときに言うこともあります。
このように、以前聞いたことばやフレーズを覚えて、時間をおいて繰り返し口にすることを、専門用語では遅延エコラリア(反響言語)と言います。
子どものオウム返しが気になったら
本やインターネットで、子どものオウム返しが発達障害の特徴として紹介されていることがあります。
オウム返しの発話が異常なのかどうか、心配になりますよね。
オウム返しはことばの発達過程によく起きる
結論を言うと、オウム返しは発達障害のある子にもない子にもみられます。
オウム返しがあるからと言って、自閉症スペクトラムなど発達障害であるとは限りません。
子どもは耳で聴いてことばを覚えています。
子どもの発達の過程で、聴いたことばをそのまま繰り返して言うことは、とてもよくある現象です。
聴いたことばを覚えて繰り返して言う能力の芽生えは、成長の証拠とも言えます。
オウム返しはいつまで続く?
子どものことばの発達には個人差があるため、オウム返しの時期もそれぞれ違います。
初めての発語(初語)の出る時期から、2〜3歳代ぐらいまでのお子さんに多いように思います。
発達過程で生じるおうむ返しは、成長に伴って自然と消えることが多いと言われています。
しかし、中には成長してもすぐには消えず、おうむ返しが残ることがあります。
オウム返しが多くて心配な場合は、早めに言語聴覚士などの専門家に相談されてみてください。
なぜことばを繰り返して言うの?
ある程度ことばが増えてもオウム返しが多いとき、次の2つの理由が考えられます。
- 聞いたことばの意味が理解できないため、とりあえず聞こえた通りに言っている
- 自己刺激として「ひとりごと」を言っている
発語やことばの発達のゆっくりで会話や質問の意味を理解することが難しいと、ことばを繰り返して言ったりします。
また、いつか聴いたことばを独り言のように自分で何度も繰り返して言うことによって、気持ちを安定させたり、自分に刺激を与えている可能性もあります。
オウム返しの受け止め方
子どものオウム返しが多いのが気になったり、成長しても自然に消えない場合はどのように対処したら良いのでしょうか。
子どものことばを否定しない
「ちがうでしょ!」「ちゃんと答えて!」などと叱ったり、無理やりオウム返しをやめさせようとするのは効果的ではありません。
子どもは、話しかけられたことばや質問を理解できない時に、どうすれば良いか分からずそのことばを繰り返しています。
まずは、上手に言えたねと受け入れて、その後に正しいことばの使い方のモデルを示してあげることが有効です。
自閉症スペクトラムのあるお子さんの場合
自閉症スペクトラムのある子どもの8割以上にオウム返しの発話がみられると言う報告があります。
自閉症スペクトラムのある子どもは、社会性やコミュニケーションの困難さを持っていることが多いです。
オウム返しは、ことばの意味の理解や、使い方の理解が発達途上のときに生じる現象です。
ここで気をつける必要があるのですが、大人からみて意味のないオウム返しの発語でも、実は子どもにとったらちゃんと意味があるかもしれないのです。
独り言としてオウム返しを行なっている場合は、頻度を下げていく必要があります。
しかし、コミュニケーションの一つとして意味のあるオウム返しの発語をしていることもあるので、その子に合わせた見極めが大切になります。
オウム返しからことばの発達を促す方法
子どもがことばを話せるようになるには、周囲のことばを聞きとってまねをして話す能力が必要です。
まねをすること(音声模倣)は、音声でのコミュニケーションの第一歩です。
オウム返しを逆に利用して、ことばの発達を促すことができます。
ことばに意味が伴ってくると、オウム返しの発語も徐々に減っていきます。
要求語の練習でことばに意味を持たせる
オウム返しの多くは、発していることばに意味が伴っていないことが問題です。
意味のある発語を増やす練習をしていくと良いでしょう。
例として、欲しいものや食べたいものをことばで伝える(要求)の練習方法を紹介します。
- 子どもの好きなもの(食べものやおもちゃなど)を見せる
- オウム返しでものの名前を言ってもらう
- うまく言えたらすぐに手渡す
ものの名前を言う→要求が叶う、という練習を繰り返すことにより、発語に意味が伴ってきます。
はじめはオウム返しで、徐々に自発的に言えるようにしていきます。
楽しい雰囲気で行うことが大切ですので、正しく言うまで渡さないとか厳しくはしないでくださいね。
質問に対してオウム返しの返事をするとき
質問をそのまま繰り返して答えのは、質問の意味を理解していないからです。
まずは、質問の仕方を工夫することが大切です。
- 短いことばで分かりやすく伝える
- なにがいい?ではなく、どっちがいい?と聞く
- 2つのカードから選ぶ練習でもOK
長い文章での質問は難易度が高いため、なるべく短いことばで質問するようにしましょう。
また、どれがいい?何が好き?何が食べたい?と言うようなオープンクエスチョンではなく、はい/いいえや、選択肢から選ぶクローズドクエスチョンにしてみましょう。
絵カードから選んでもらい、発語を伴わせるのも良い方法です。
何を聞かれているのか分かりやすくする工夫をするようにしてください。
意味のないひとりごとには反応しすぎない
もし、独り言のように何かのことばやフレーズを繰り返して言っている場合、その言葉にはあまり反応しないようにしましょう。
同じ行動を繰り返したり、ひとりごとを繰り返したりすることを、常同行動と言います。
不安な気持ちを落ち着かせるために行うこともありますし、刺激を求めて行なっている場合もあります。
ひとりごとには大きく反応したり声かけせず、別の行動やコミュニケーションを促すのが良いでしょう。
まとめ・終わりに
今回は、子どもがおうむ返しをする理由と、良い対応方法について紹介しました。
ことばを繰り返して会話にならないと心配になりますが、オウム返しはコミュニケーションにおいて基礎となる能力です。
ことばの理解力の発達に伴って、オウム返しは減っていくことが多いです。
オウム返しをやめさせようとするのではなく、まずはことばの発達を促していきましょう。
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オウム返しやことばの発達について気になったら、どうぞお気軽にご相談ください。