側音化構音とは?「き」「し」「ち」が言えない原因と、発音を治す練習方法(構音訓練)
今回のコラムでは、「き」「し」「ち」「り」など、”イ列音(「い」の段の音)”が言いにくくなる側音化構音について、言語聴覚士が解説します。
側音化構音は、子供にもみられますし、大人になってからも発音のくせや言いにくさが残る場合があります。自然には治りにくいため、練習の必要な状態です。
側音化構音とは
側音化構音とは、「き」「し」「ち」「り」や、小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」のつく音(拗音)などによくみられる、間違った発音の仕方のことです。
発音や滑舌が気になる場合、次の2つのパターンがあります。
- 発達途上によくみられる間違い(いわゆる赤ちゃんことば)
- 発達途上にみられない間違い
例えば「さかな」が「たかな」や「しゃかな」になるのは、1の発達途上によくみられる音の間違いです。発達途上の音の間違いは、幼児のお子さんの場合、成長に伴って自然に治る可能性も高いです。
しかし、側音化構音は2の発達途上にみられない音の間違い方の1つで、自然には治りにくい状態です。
側音化構音は、自然には治りにくいため、小学生以上のお子さんや、大人の方にもみられます。
側音化構音の特徴
側音化構音って聴きなれない単語ですよね。
お子様の発音や、ご自分の発音が、側音化構音かどうか、まずは気になると思います。
側音化構音は、言語聴覚士などの専門家でないと見分けるのが難しいとも言われていますが、ご家庭でもできるチェック方法(発音の例)と特徴について紹介します。
発音の特徴
- 「き」「じ」「し」「じ」「ち」など、「い」の段の音が歪んで聞こえる。
- 「し」が「ひ」に近い音に聞こえる
- 「じ」が「ぎ」に近い音に聞こえる
- 「ち」が「き」に近い音に聞こえる
- 「り」が「ぎ」に近い音に聞こえる
- シャ行が、ヒャ行に近い音に歪んで聞こえる
- 小さい「ゃゅょ」のつくことばが言えない、言いにくい など
上記のすべてが当てはまるわけではなく、一部の音だけが側音化構音になっている場合も多いです。
口の動き(見た目)の特徴
「い」の段の音を発音する時に、次のような様子がみられる場合があります。
- 唇の片側を引くように発音する
- 左右どちらかの口角を上げるように発音する
- 発音するときに、下の顎が左右どちらかに偏位する(ずれる)
まとめると、お話する時に「い」の段の音が歪んで聞こえて、唇や顎が左右対象に動いていないように感じる場合、側音化構音の可能性があります。
当てはまるかも?と思ったら、まずは言語聴覚士に相談しましょう。
側音化構音の原因
では、なぜ側音化構音になるのでしょうか。
口蓋裂など口の中に原因のあるお子さんがなる場合もありますが、口の中の機能に特に異常もなく、ことばの発達も順調なお子さんにもみられます。
鼻音腔閉鎖機能や、歯並び、咬合の異常はあまり関係ありません。
原因は不明なのですが、ことばや発音の発達途上に、言いにくい音を言おうとして、正しくない発音の仕方のくせが定着してしまうのではないかと考えます。
大人の方の側音化構音は、大人になってから側音化構音になるのではなく、子どもの頃の側音化構音が自然に治らずに残ってしまっている状態が多いです。
側音化構音とはどのような状態?
普通、お話する時には息は口の中央から出るのですが、側音化構音の場合は、息が口の中央から出ずに、左右どちらか、もしくは両側の口角近くから出ています。
これは、舌に力が入って盛り上がった丸い形になるために、舌が口の中の天井と接触して、息が真ん中から出せないために起こります。
発音だけではなく、お話する時の口の動き(見た目)にも影響が出る(「い段」の音を言う時に口角が持ち上がったり歪むなど)場合もあるので、練習で治すのがおすすめです。
側音化構音は治るの?
側音化構音は治るのでしょうか?
側音化構音は、自然には治りにくい状態ですが、発音の練習によってほとんどの場合は改善できます。
いつから練習を開始する?
側音化構音に気づいたら、まずはできるだけ早く相談した方が良いでしょう。
なぜなら、側音化構音は他の誤り音と異なり、成長を待っても自然に治ることが少ないためです。
とは言っても、幼いお子様の場合は、まだ正確に指示に従って練習することが難しかったりしますので、集中力や理解力が十分に備わってから練習を開始した方が良い場合もあります。
KIZUKIでは、通常の発音の練習は早くて4歳頃のお子さまから行っております。
ただ、側音化構音の場合は、小学生以上など効果的に練習できる年齢まで待つ場合もあります。
大人の方の場合、側音化構音になる理由や改善方法をお伝えしています。
原因や練習方法が分かると、ご自分で練習したり試行錯誤しながら改善できますのでまずはご相談ください。
側音化構音の改善方法(発音矯正)
ここでは、側音化構音がある場合の練習方法について紹介します。
どのような流れで練習をするのか、大まかにイメージして頂くことを目的としています。
自己流で練習をされますと、さらに良くない発音の仕方がついてしまう場合もありますので、必ず言語聴覚士の指導のもと練習を行ってくださいね。
まずは構音(発音)のチェックを
お子様の場合も、大人の方の場合も、まずは今の構音(発音)の状態や舌の動かし方についてチェックします。
検査といっても、自由にお話したり、イラストや写真をみて言葉を言ってもらう方法で行いますので、お子さんは検査されているとは気づかないかもしれません。
練習のステップ
もし側音化構音があることが分かったら、次のような手順で練習していきます。
- 舌の脱力と、舌や唇の位置の矯正
- 母音「い」の練習
- 「い」のつく言葉や文章の練習
- 他の「い」段(「き・し・ち」など)の練習
舌の脱力が最も大切
側音化構音がある場合、舌に余計な力が入りすぎている場合が多いです。
側音化構音を治すためには、まずは舌の力を抜くことが大切です。
お子さんの場合、意識的に力を抜くことが意外と難しかったりします。
口や舌の動かし方が不器用な場合もあるので、お口の運動を先に行う場合もあります。
上手に力が抜けるようになったら、力を抜いた舌の真ん中から息を出して「い」を発音する練習を行っていきます。
舌の脱力の練習は、ご家庭でも行えますので、ぜひ行ってみてくださいね。
舌の脱力の方法
- まず、リラックスします。力をぬいて「はぁ〜」とため息をつくのも良いです
- 「ベー」と舌を出してもらいます
- 舌の先がとんがったり波打ったりせずに、ふんわりと出せていたら、上手に脱力できています
言語聴覚士による発音のレッスンを受けましょう
発音や滑舌について気になったら、まずは言語聴覚士に相談しましょう。
発音の状態について詳しく調べて、効果的な練習方法をお伝えすることができます。
ネットなどで見た方法や自己流の練習方法を行って余計に舌に力が入ってしまう場合もあるので、まずは相談して頂ければと思います。
言語聴覚士とは
言語聴覚士とは、ことばや発音についての専門家(国家資格)です。
発音のレッスンや、滑舌改善のレッスンを行うことができます。
KIZUKIは言語聴覚士によることばと発音の教室で、東銀座・オンラインで予約制の個別レッスンを行っています。
個別の教室ですので、他の生徒さんにも会うこともありませんし、リラックスして練習を行うことができます。
毎週通うことが難しい場合、オンラインレッスンも行っておりますのでご相談くださいね。
まとめ・終わりに
今回は、側音化構音について、言語聴覚士が詳しく解説しました。
側音化構音が自然に治ることは少ないので、お子様の発音が気になったら早めにご相談ください。
大人の方で側音化構音がある場合は、毎日の練習で改善できますので安心してくださいね。正しい方法で、根気よく練習していきましょう。
お申し込み
KIZUKIは、言語聴覚士による、ことばと発音の教室です。
発音や滑舌について気になったら、どうぞお気軽にご相談くださいね。