子供が言葉の語尾だけ発音するのはなぜ?2歳〜3歳に多いことばの特徴と発語を促す接し方
子どもが、ことばの最後(語尾)だけ、もしくは単語の一部だけ発音・発語するときには、どのような原因が考えられるのでしょうか。
語尾しか言わない理由と、良い接し方について、言語聴覚士が解説します。
語尾だけ話す状態の例
語尾しか話さないとは、どのような状態か、例を挙げて紹介します。
- 「ねこ」→「こ」
- 「電車」→「しゃ」
- 「おはよう」→「よう」
- 「アンパンマン」→「まん」
- 「〜あった」→「た」
- 「〜やって」→「て」
このように、ことばの最後の1〜2文字だけ言ったりします。
「電車」も「消防車」も「しゃ」、「やって」も「あけて」も「て」になってしまうので、何を伝えようとしているか分かりにくかったりします。
語尾ではなく、「ジュース」→「じゅ」のように、最初の部分を言うお子さんもいます。
ことばを話せるようになる時期によくある現象
語尾だけしか言えないと心配になってしまいますよね。
でも、ことばの話し始めに、まず語尾から言えるようになるのは、比較的よくある現象です。
子どもが話せるようになる、初めての意味のある言葉(発語)を「初語」と言います。
初語が出る時期には個人差がありますが、だいたい1歳前後の場合が多いです。
言葉をお話できるようになっていく過程は、子どもによって様々で、まずは語尾からお話できるようになる子もいます。
ことばの話し初めに、語尾だけ発音していたとしても、過度に心配する必要はありません。
語尾だけ話す理由
なぜ赤ちゃんや、話し初めの時期の子どもは、言葉の語尾だけおしゃべりするのでしょうか。
考えられる理由を列挙して解説します。
- 語尾が聞き取りやすく、記憶しやすいから
- まだ長い言葉をお話できないから
- 音韻意識が未発達だから
- 発音の難しい音を省略して言っているから
語尾が聞き取りやすく、記憶しやすいから
ことばのなかで、語尾が聞き取りやすく記憶しやすいから、語尾を覚えてお話している可能性があります。
大人でも、耳慣れない外国語の会話を聴くと、全体を聞き取ってまねして言うことは難しいですよね。
でも、語尾の部分はある程度印象に残ったりします。
子どもも同じで、日本語のことばの語尾は印象に残りやすく、覚えやすい部分です。
すべての子どもが語尾から話すわけではないのですが、語尾のほうが覚えやすく言いやすいお子さんも珍しくありません。
まだ長い言葉をお話できないから
ことばをお話するには、音から音へ、口の形や舌をコントロールしながら動かす必要があります。
長いことばになればなるほど、口や舌の動かし方も難しくなります。
ことばの話し始めのお子さんは、まだ口や舌をなめらかに動かすことが難しいので、語尾など単語の一部だけを言ったりする場合があります。
音韻意識が未発達だから
音韻意識とは、「ねこ」は「ね」と「こ」の音からできている、と気づく能力のことを言います。
幼い子どもは、音韻意識がまだ発達していないため、「ねこ」を言葉のまとまりとして捉えて発音しています。
音韻意識が発達してくると、言葉を構成する音に興味を持ち、しりとりなどの遊びも行えるようになっていきます。
音韻意識が未発達の場合、言葉の一つひとつの音に気をつけて発音するというよりは、聞こえた通りに言葉のまとまりとしてお話している状態ですので、言葉が不明瞭になりやすくなります。
そのため、音のまとまりとして聞こえた通りにお話しようとして、一番印象に残っている語尾の部分をお話しているのかもしれません。
発音の難しい音を省略して言っているから
子どもは、はじめから日本語のすべての音を発音できるわけではありません。
成長に伴って、発音できる音も徐々に増えていきます。
ことばの中に言いにくい音が含まれている場合、言いにくい音を別の音に言い換えて言ったり、音を省略して一部だけ言ったりすることも、よくあります。
発音の発達については、以前詳しく解説しましたので、次のページをご参照ください。
語尾だけ話す子どもへの良い接し方
子どもが語尾だけお話しているとき、どのように接すれば良いか、解説します。
語尾で話せているなら、ことばの理解はできている
まず、お子さんが語尾をお話できているということは、ことばの理解はできていて、お話したいという気持ちも順調に発達しているという証です。
「語尾しか話せない」ではなく、ちゃんと意味を分かって頑張ってお話してくれていると受け止めましょう。
子ども本人は、自分ではちゃんとお話しているつもりだったりしますので、お話している内容を理解してあげることも大切です。
ときには、何を伝えようとしているか分かりにくい場合もあるかと思いますが、できるだけお子さんが言いたいことを理解して、褒めてあげたり、笑顔で反応してあげましょう。
頑張って伝えたことばを理解してもらえることで、”もっと話したい”という気持ちも強まり、ことばが発達していきます。
まずは受け止めて、正しいことばを聞かせてあげよう
お子さんが頑張って伝えてくれたことばを受け止めたら、直後に正しいことばを言ってあげましょう。
子どもは、耳から聴いてことばを覚え、試行錯誤しながら正しくお話できるようになっていきます。
例えば、次のように会話を行ってみてください。
子ども「こ!(あ!ねこだ!)」
大人「そうだね!”ねこ” だね!」
このように、まずは子供の言葉をしっかり受け止めて、否定せずに、正しい言葉や発音を聴かせてあげることが効果的です。
視線や指差しなどから言いたいことを推測して、正しい言葉を言ってあげると、子どもは”伝わった!”と思って嬉しくなり、発語も増えていきます。
まだ、言い直させたり、むりに言わせたりする必要はありません。
ゆっくり、はっきり、短いことばでお話しよう
もう一つのポイントとして、周囲の大人のお話の仕方の工夫があります。
語尾だけお話している場合、全体のことばがうまく聞き取れていない場合もあります。
周囲の大人が、ゆっくり、はっきり、短い言葉でお話するようにすると、ことばが聞き取りやすくなり、まねして言いやすくなります。
子どもは、大人の言葉を耳から聴いて、まねして言うことで言葉を覚えていきますので、まずは大人が子どもにとって聞き取りやすいお話の仕方を心がけていくことが大切です。
2歳〜3歳になっても語尾だけしか言えない場合は?
お子さんによって、ことばの発達の仕方は様々です。
周囲の大人の言葉を聴いてすぐにまねをして言おうとする子もいますし、まずは頭のなかにことばを溜め込んでいき、ある程度自信がついてからお話を始める子もいます。
ある程度ことばが増えてきて、2歳〜3歳になっても語尾しか言えない場合にはどうすれば良いのでしょうか。
音声模倣や音韻意識の練習が効果的な場合もありますし、別の原因が隠れている場合もありますので、まずはことばや発達の専門家である、言語聴覚士(国家資格)に相談するのがおすすめです。
子供の言語発達を専門とする言語聴覚士はまだ多くないのが現状ですが、ことば発達セラピーKIZUKIでは言語聴覚士による個別のレッスンを行なっています。
KIZUKI 言語聴覚士によるレッスン方法の例
KIZUKIで行っているレッスン方法の例を紹介します。
お子さんによって、効果的な方法は異なりますので、参考にご覧ください。
3歳 男の子 徐々に発語は増えてきたけれど、語尾だけでお話しているお子さんに対して
週1回のレッスンで、語いを増やす課題と、音韻を意識して言葉のはじめの部分から言う練習を行いました。
ご相談時には「これなに?」の質問に対して語尾だけで答えてくれていましたが、上記の練習を繰り返すと、数ヶ月で2〜3文字の言葉がある程度言えるようになりました。
その後、レッスンを継続して、4文字以上の長いことば(「れいぞうこ」など)も自発的に言えるようになりました。さらに、自然と二語文以上の発話も増え、全体的な明瞭度も上がりました。
まとめ・終わりに
今回は、子どもが言葉の語尾だけ言うときに考えられる原因と、良い接し方について紹介しました。
語尾から言えるようになるお子さんもいますので、過度に心配しすぎる必要はありませんが、2〜3歳になっても語尾しか言えない場合は、言語聴覚士などの専門家に相談するのがおすすめです。
KIZUKIは、言語聴覚士による個別のことばのレッスンを行なっている教室です。
体験レッスンも随時行なっておりますので、どうぞお気軽にご相談くださいね。