子どもの発音問題まとめ。さ行が言えない等、滑舌が悪い時の原因と、舌のトレーニング
お子さまの発音が聞き取りにくかったり、特定の音が言えない時の原因や練習方法について、言語聴覚士が解説します。
子どもの発音の発達について
子どもは、言葉を話せるようになってすぐ、明瞭な発音でお話できるわけではありません。
赤ちゃんの出せる声は「あーあー」といった母音を中心とした音声です。
身体の成長に伴って、徐々に口腔(口の中の空間)の大きさも広くなり、舌の筋肉も発達して動かしやすくなっていきます。
小さいお子さまの発音は不明瞭ではっきりしないのが普通で、周囲の大人の発音を真似をしたり、自分で修正しながら、だんだんと正確な音を出せるようになっていきます。
はっきり言えるようになる時期の目安
日本語には、発音しやすい音と、発音しにくい音があります。
子どもは、まずは発音しやすい音から言えるようになっていくことが多いです。
ことばや発音の発達の順序、スピードには個人差がありますが、目安となる年齢を紹介します。
- 1〜2歳:母音、パ行、バ行、マ行、ヤ行、ワ行
- 2〜3歳:タ行、ダ行、ナ行、シャ行、ジャ行、チャ行
- 3〜4歳:カ行、ガ行、ハ行
- 4〜5歳:サ行、ザ行、ラ行、「つ」
(個人差があります)
まだ言えない時の「置換」と「省略」
子どもは成長に伴って様々な音を正しく言えるようになっていきます。
すべての音が言えるようになる前、幼児期の子どもは難しい音を簡単な音に言い換えて発音したり、省略して言ったりしてます。
例を挙げて紹介します。
<置換(置き換え)>
言いにくい音や、まだ言えない音を、言いやすい音に言い換えて発音します。
例えば、「さかな」を「たかな」や「しゃかな」と言ったりします。
これは、「さしすせそ」が言いにくいので、言いやすい「た」や「しゃ」に言い換えているという状態です。
<省略>
まだ言えない音の、子音を省略して発音します。
例えば、「ごはん」を「ごあん」と言ったりします。
これは、「ごはん」の「は」の子音[h]がまだ言えないため、子音を省略して言っている状態です。
自然に治る場合も、治らない場合もある
このように、子どもは言いにくい音も試行錯誤しながら言っていて、徐々に正しい発音ができるようになっていきます。
しかし、中には試行錯誤するときに、正しくない発音のくせや、代わりの発音の仕方が定着してしまう場合があります。
発達途上に言えない音があっても、成長すれば自然に言えるようになる場合もありますが、なかには自然には治らず発音の練習が必要になることもあります。
正しく発音できない時に注意すべきこと(原因)
これまで、言葉と発音の発達と、発達途上によくある間違いについて紹介してきました。
発音がはっきりしない、言えない音があるときに、何らかの原因がある場合もありますので、簡単に解説します。
- 聴力の問題
- 口の中の機能や形態の問題
- 言葉の発達や、知的発達の遅れ
上記のような原因がある場合もあります。
例えば、お耳の聞こえにくさが原因で発音に影響することがあります。
発音は、耳で聴いて試行錯誤しながら正しく言えるようになっていきますので、気づきにくい軽度の難聴があったとしても発音に影響する場合があります。
また、口の周りの筋肉や、舌の筋肉が未発達だったり、低緊張だったりすることが原因で、上手に発音できない場合もあります。
口の中の問題としては、他にも舌小帯短縮症、舌癖、口蓋裂(粘膜下口蓋裂)などの問題が隠れていることもあります。
言葉の遅れや、知的な遅れがあるため、ことばを構成する音をうまく認識できなくて、発音が不明瞭になっていることもあります。
実際には、このような明らかな原因はないけれど、上手に発音できなかったり、間違った発音のくせがついてしまっているお子さんも多いです。
舌小帯短縮症と言われたら
舌小帯短縮症とは、舌の裏側についているヒダ(舌小帯)の長さが生まれつき短い状態のことを言います。
舌小帯短縮症があっても、特に発音に影響がないことも多いのですが、程度によっては舌足らずになったり舌の先を使う「ラ行」などの音が言いにくくなる場合があります。
見た目でわからない粘膜下口蓋裂にも要注意
口唇口蓋裂とは、生まれつき口の中の天井の部分(口蓋)や唇に裂け目のある状態です。
粘膜下口蓋裂がある場合、一見正常な粘膜の下の筋肉に裂が生じている状態ですので、見た目では分かりません。
発音の相談にいらっしゃって、粘膜下口蓋裂が分かった例もありますので、注意が必要です。
発音の練習はいつから始める?
発音が自然に改善しなかった場合、何歳ごろから練習が必要なのでしょうか。
目安としては、小学校入学までに正しい音が言えるように、練習を開始するのがおすすめです。
発音以外の発達の問題がない場合は、KIZUKIでは4歳頃から発音のレッスンを始めています。
開始年齢はあくまで目安です。
先ほど紹介したような、発音の仕方によくないくせがついている場合は、それより前に練習をする場合もあります。
また、小学生以上のお子さんや大人の方の発音も、練習で改善できます。
年齢よりも、言葉の様子や発達状況への配慮が大切
発音の練習には、細かい指示に従って口や舌を動かしたりする能力が必要になります。また、20〜30分は着席して取り組める集中力も必要です。
発音の練習をすることで、お話することが嫌になってしまうと、ことばの発達にも影響する場合があります。
ことばの遅れのあるお子さんの場合、発音練習の開始時期は慎重に判断しています。
いきなり発音のレッスンはしないで、お口の運動を行ったり、日常生活で口や舌を使う工夫をお話してお家で実践していただく場合もあります。
また、吃音のあるお子さんや、発達障害のあるお子さんに発音のレッスンを行う場合も、それぞれのお子さんに合わせた配慮を大切にしています。
言えない音ごとの練習方法
「さしすせそ」「かきくけこ」「らりるれろ」が言えないなど、比較的よく相談を受ける音があります。
日本語には言いやすい音と言いにくい音があるので、お子さんがつまづきやすい音もある程度決まっています。
ここでは言えない音ごとに、よくある原因や練習方法を紹介していきます。
サ行・ザ行が言えない
「さ行」が「た行」「しゃ行」、「ざ行」が「だ行」「じゃ行」になる場合について解説します。
<例>
- 「さかな」→「たかな」
- 「スイカ」→「しゅいか」
- 「ぞう」→「どう」
- 「ズボン」→「じゅぼん」
「さ行」「ざ行」は日本語の中で難しい音ですので、小さいお子さまの場合は言いやすい音に置き換えて発音したりします。
成長に伴い自然に言えるようにならない場合は、舌の位置や音の出し方に気をつけていう練習を行います。
シャ行が言えない
「しゃ行」が「ちゃ行」になる場合について、解説します。
<例>
- 「でんしゃ」→「でんちゃ」
- 「いっしょ」→「いっちょ」
- 「ちゅうしゃ」→「ちゅうちゃ」
「しゃしゅしょ」を言う時には、舌の先と上の前歯の後ろの歯茎の間に隙間を作って風を出す必要があります。
舌の先が口の中の天井にぴったりついてしまうと、「しゃ」が「ちゃ」になってしまいます。
舌の先と歯茎の間から風を出す練習を行います。
カ行・ガ行が言えない
「か行」が「た行」、「が行」が「だ行」になる場合について解説します。
<例>
- 「たいこ」→「たいと」
- 「時計」→「とてい」
- 「ゲーム」→「でーむ」
か行・が行は、本来は舌の奥の方(奥舌)を持ち上げて発音する音なのですが、奥舌を持ち上げる代わりに舌の先で発音すると、た行・だ行になってしまいます。
奥舌を持ち上げて音を出す練習をすることで、改善させることができます。
ラ行が言えない
らりるれろが「だ行」になる場合について解説します。
<例>
- 「ライオン」→「だいおん」
- 「冷蔵庫」→「でいぞうこ」
- 「ロボット」→「どぼっと」
本来、ラ行は舌の先を前歯の裏にあてて、優しく降ろすように発音する音です。
この時に、舌の先に力が入りすぎると、「だ行」になりやすくなります。
発音する時に舌の位置や、舌の力の入れ方に気をつけて練習をすると良いです。
「つ」が言えない
「つ」が「ちゅ」になる場合について解説します。
例
- 「つみき」→「ちゅみき」
- 「机」→「ちゅくえ」
- 「鉛筆」→「えんぴちゅ」
「つ」は、上の前歯のすぐ裏に舌の先だけを当てて発音する音なのですが、舌の位置が少し後ろになってしまったり、舌の先だけではなくやや広い範囲でに口の中の天井に接してしまうと、「ちゅ」の音になります。
舌の位置と形に気をつけて言う練習をすることで、改善できます。
治りにくい発音のくせは矯正が必要かも
子どもの発音の誤りは、大きく分けて次の2種類あります。
- 発達途上にみられる発音の誤り
- 発達途上にみられない発音の誤り
発達途上にみられる発音の誤りは、いわゆる赤ちゃんことばの名残のような状態です。自然に治る可能性も高いです。
ただ、中には、発音の仕方を子どもが試行錯誤するうちに、本来は発達途上にみられない発音の仕方をくせとして身につけてしまう場合があります。これを異常構音と言います。
自然には治りにくいため、練習(構音訓練)の必要な状態です。
まずは相談してチェックしてもらいましょう
お子さんの発音の状態について気になったら、まずは言語聴覚士などの専門家に相談して現状をチェックしてもらうのがお勧めです。
成長に伴い自然に改善する場合もありますが、間違った発音が定着してしまっている場合には、練習(トレーニング)が必要になるためです。
自然には治りにくい発音の状態について、どのようなものがあるか紹介します。
側音化構音とは
側音化構音があると、「き」「し」「ち」「り」などイ段の音や、小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」のつく音(拗音)が言いにくかったり、違う音になったりします。
自然には治りにくいので、大人の方で側音化構音が残っている方もいらっしゃいます。
口蓋化構音とは
口蓋化構音があると、サ行、タ行、ダ行、ラ行など舌の先を使う音が言いにくかったり、違う音になったりします。
発音する時に、舌の先を使用せず、舌の中央部で構音するために起こります。
全体的に不明瞭で、はっきりしない発音に聞こえることがあります。
上記の音が言えなかったとしても口蓋化構音とは限りませんので、心配になったら相談してくださいね。
言語聴覚士による発音レッスン(構音訓練)
お子さんの発音について気になったら、まずは言語聴覚士に相談するのがおすすめです。
言語聴覚士とは、ことばや発音、音声、発達についての専門家(国家資格)です。
ことばの教室を行っていて、ご相談内容のなかで一番多いのが、「さしすせそが言えない」「カ行がタ行になる」「発音がおかしい」というような発音についてのお悩みです。
KIZUKIは、言語聴覚士による言葉の教室です。
オンラインで、発音や滑舌のレッスン(トレーニング)も行うことができます。
言語聴覚士による発音レッスンがおすすめな理由
ボイストレーニングや滑舌改善の教室も多くありますが、ことばや発音についての国家資格は言語聴覚士のみです。
言語聴覚士によるレッスンでは、発声発語器官の知識や、音声学など専門的な知識に基づき、まずは誤り方の分析をして、計画をたて、効果的なレッスンを行うことができます。
これを、構音検査と、構音訓練と言います。
発音のチェック(構音検査)について
発音のレッスンを開始する前に、現在の発音の状況についてチェックすることが大切です。
発音のチェックを行うと、次のような内容がわかります。
- 言えている音と言えていない音
- 音の誤り方の傾向
- 発達途上の誤りか、そうではない誤りか
- 今すぐ練習を開始した方が良さそうか
KIZUKIでは、イラストや写真を見てことばを言ってもらったり、まねして音や文章を言ってもらう方法で実施しています。
誤り方の傾向を捉えて、練習方法をご提案することができます。
発音レッスンの流れと内容
KIZUKIの発音レッスンは、次のような流れで開始します。
- 発音チェック(構音検査)
- 誤り音の分析と、練習方法のご提案
- 発音レッスンの開始(構音訓練)
発音レッスンは、1対1の個別にて行います。
発音の状態はお子さんそれぞれ違うため、それぞれに合わせた内容やスピードでレッスンを行う必要があるためです。
レッスンでは、まずは音の聞き分けの練習をします。正しい音を出すためには、まずは耳で音を聴き分ける能力が必要です。
その後も、いきなり単語や文章で発音の練習するのではなく、まずは1音ずつ、無理なく確実に言えるように練習していきます。
好きなキャラクターの名前で練習したり、ゲームや遊びを取り入れたりと、楽しく練習するための工夫をしています。
オンラインレッスンも効果的
お子様の年齢や、発音の状態にもよりますが、オンラインのみの練習でも効果がでる場合があります。
オンラインレッスンは、1〜2週間に1回の頻度でレッスンを行い、レッスン内容を毎日お家で練習して頂いています。
30分程度着席して集中できるお子さまでしたら実施できます。お子さまの参加が難しい場合には、練習方法を保護者の方にお伝えしてお家で取り組んで頂いています。
ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
まとめ・終わりに
今回は、お子さんの発音や滑舌についての情報をまとめて紹介しました。
発音や滑舌が気になる場合、まずは現状を詳しくチェックして、練習が必要かどうか判断することが大切です。
KIZUKIは言語聴覚士による言葉と発音の教室です
KIZUKIでは、国家資格・言語聴覚士による、発音のレッスンを行うことができます。
発音や滑舌のお悩みのほとんどは、練習により改善できますので、まずはお気軽にご相談くださいね。
体験レッスンも随時行っております。